October.10.2008「コーティング(二)」
October.10.2008「コーティング(二)」
今日の歌::眼前に 緑の斜面 迫り来る 思わず叫ぶ ターザンのごと
(つづき)平井コーチはホテルに帰ってからも北京への戦略を練っていた。北島選手の200㍍の泳ぎはメドがついたという。(これは金メダルが取れるという意味だろう)。しかし、100㍍は泳法に改良の余地があると考えた。(結果的には、200㍍のゆっくりとした力強い泳ぎで成功した)。試合前の北島選手の言葉を覚えている。「(世界記録は出せなくても)せめて金メダルは取らないと申し訳ない」と。恐るべき自信に満ちた言葉ではある。
背泳ぎの中村礼子選手は精神面が最大の課題であると踏んだ。アテネの200㍍で銅メダルを獲得したが、連続で取れるかどうかが問題だった。一位と二位の選手は抜群に強い。だから金と銀はムリ。可能性としては銅メダルだった。しかし、三位に入るかも知れない選手は、中村選手ではなかった。その選手は、150㍍からのスパートが猛烈である。随って150㍍から中村選手がその選手と同時にスパートしても負ける。戦略はそれからだった。中村選手に、100㍍を過ぎたときからロングスパートをかけさせる。そして、150㍍で相手にスパートをかけられても、逃げ切る。戦略は、見事に成功した。私はこのいきさつをテレビで見ていて、コーチの指導が如何に重要であるかを教えられた。”選手の力を十二分に出し尽くさせる”の一言に尽きる。そのためには、相手の選手のデータを集め、また自分の選手の長所・短所を知り尽くして、勝利するように向かわせることだろう。
コーチの役目は、「選手をさらなる高みに導くことである。そのためには、選手の一歩先を歩かなければならない」と云う。この考え方は、直下の人の指導に応用できると思う。
また、選手は自分を信じなければ能力は出てこない。「自信とは自分で自分のことを信じる」ということだからだ。
合宿中に情報が入った。ハンセンが予選落ちしたのである。この情報には、日本にいた私も家内と共に驚いた記憶がある。平井コーチは分析する。「ハンセンが4位で予選落ちの結果は、先月出した北島の世界記録の重圧が原因である。あれだけの実力者でも、精神のバランスを崩すと力が出ない」。その時の、ハンセンの泳ぎを平井コーチが解説していたが、泳ぎが硬くなっていて、十分に前に進んでいかない状態だった。競泳とはそんなメンタルなものだったのだろうか!
平井コーチは言う。「精神的なものが重要である。最後はメンタルな勝負となる」と。
その精神はどのようにして鍛えるのだろうか。再び、平井コーチは言う。「精神は体で鍛える」と。随って、アリゾナ高地合宿は、極限のトレーニングであったそうだ。北島選手は「全然、きつい。体が壊れる」「マジで吐きそう!」と悲鳴をあげていた。厳しいトレーニングを乗り越えたという自信が、本番で、崖っぷちの選手たちを支えるという。このトレーニングで、北島選手たちは、気力を出し尽くして、迷いを振り切った。
北京オリンピックで北島選手と中村選手とが二大会連続メダルとなり、上田春佳選手も日本新を連発したので、平井コーチはとても喜んでいた。平井コーチの言葉を聞いていると、コーチする人間の喜びが私達に伝わってくるようだった。人を育てることが如何に楽しいことであるかである。振り返って私達をここまで育ててくださった先輩達に心から感謝する次第である。(つづく)
*昨日は松江の業者廻りをしたが、山の中の青年会員の家も感謝訪問した。お父さんは松江道場にもよく行ったことがあると話しておられた。山の斜面の緑の壁がとても印象的だった。色々と善いことがあった。また、帰りに常々行きたかった島根県立美術館での「エリック・カール展」を見た。よく出てくる「はらぺこあおむし」や様々な絵を見ていると、心が童心に帰ってしまうのだった。
中内 英生
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